化粧品の価格ってアイテムによってイロイロですよね。
どういう理由で値段が決まっているのかは、
その商品に関わる様々な事情による結果なのでしょう。
皆さんの中には、化粧品を買うのに価格なんてあまり気にしませんっ・・・って方もおられると思います。
そういう方は今回の記事はあまり関心を持たれないかもしれません。
でも、できるだけ自分が無駄だと思うことにお金をかけたくないという方は
続きを読んでいただきたいと思うのです。
化粧品の価格でよく言われるのが、
広告宣伝費ですが・・・これは置いておきましょう。
今回お話するのは無駄な労力をかけているのに、美容という本質から反れた商品
それはオモシロ化粧品ですね。
具体的にどういうことなのか・・・
詳しく説明していきましょう。
OEM案件で一番相談が多い・・・「他に無い商品」
開発依頼で商談の際によく聞かれること
よそでは無い、変わった処方を提案していただけませんか??
化粧品も出尽くした感が強く、よそのアイテムに対抗するためには
他ではない特徴のある商品を作っていかなければなりません。
まあ、当たり前の発想ですし、新しいものを作ることはイイことです。
それでは例えばどんな企画を考えておられるのでしょうか・・・
使う時に物理的に何か変化するようなものはできますか?
・・・・・・・・・・・・・・・
小さな企画会社や個人でディーラーをしているお客さんの案件で結構多い発想でして、
正直、もう少し美容が関わるまっとうな企画は考えられないのかなぁ・・・・・と思うのですが。。。。
まあ、こちらからも提案は無いし、しょうがないですよね。
そういう商品もに魅力を感じるお客さんはおられるかもしれません。
決して全否定をするわけではないのです。
ただ業界ネタとして、美容効果とは別の特徴を狙って、
その性質を美容のストーリーにつなげて訴求する商品が
企画される話がある事を知っておいてください。
泡が出る・・・色が変わる・・・様々なオモシロアイテム
使った時に物理的な変化が起こる製剤ですが、
具体的にどんな商品があるでしょうか。
以前記事を書いた泡が出るモコモコパックがそうですね。
他にも色が変わるファンデーションとかリップスティック
ボロボロとカスが出て来る角質落としジェル
塗ると水が出て来るウォーターブレイクタイプのクリーム
ああそう、マウスウォッシュで黒い汚れが目で見えるってのもありますよね。
これらの商品特徴は、原料の性質や化学変化を応用したもので美容の効果にはつながりません。
また、こういった効果を出すために無駄な処方コストをかけているとも言えるのです。
それぞれのアイテムについて簡単にアナライズをしてみましょう。
(個人の見解です!!)
泡の出るパック
剤型はアクリルポリマーで固めた水ゲルです。
オールインワンジェル化粧品で流行ってるカルボマーを使ったゲル製剤の仲間ですが、
違うところは活性剤と超揮発性のエーテルが混ぜ込まれているところですね。
これが塗った時に泡が出る仕掛けなんですが・・・・
このトリックって化粧品として必要でしょうか?
泡パックについては別の記事に詳細がありますのでご参考ください。
不思議化粧品 発泡するモコモコパック
色が変わるメイキャップ化粧品
これはBBとかCCでいろんな製品がでていますよね。
仕組みは皆さんもご存知だと思います。
色物の化粧品は酸化チタンや酸化鉄などの顔料が使用されます。
顔料とは肌で発色させる為の色のついた粉ですね。
一言で「顔料」といっても原料としてはものすごく奥が深いジャンルで、
様々な工夫がなされた商品があるのですが、
今回のお話で当てはまるのがカプセル内包型顔料です。
ベージュやらオークルといった肌に近い色は、
酸化チタンの白をベースに赤、黄、黒などの酸化鉄を組み合わせて配合量で調色します。
さらに他の顔料も組み合わせて様々な色あいを出し、バリエーションを増やすのですが、
通常のファンデでは、製剤化の段階で顔料を練りこませて均一にし、配合量通りの発色を
再現することを大きな課題とします。これが最も重要で技術的に結構難しい・・・
例えば次の比率で色を作ったとしましょう。
白 | 黄 | 赤 | 黒 |
8.0 | 1.5 | 0.1 | 0.05 |
この配合比で顔料を添加すれば狙った色ができる・・・そうではない。
粉を均一につぶして全体を均等に混ぜ合わせないと、同じ配合でも色は変わります。
黒を0.05配合しても、ダマになって分散していなかったら黒色は発色しないのは
イメージとして分かると思います。
色が変わる製品はカプセルに内包しているため、使う前は違う色に見えるわけです。
塗るとカプセルが壊れて顔料が出て来るので肌色に変わる・・・そういう仕組みですね。
しかし私は技術者として思うのです。
メイク処方で顔料の分散性・均一化というのは最もコアになる技術
製剤化の際にどれだけ均一に顔料を分散して思い通りの色に発色させるかが難しく
同時に要求されるところ。。。
どうして肌に塗った時に初めて発色させるようなことをするのか
そうする事に一体・・・どういう利点があるというのかしら・・・
ボロボロとカスが出て来る角質落としジェル
これも有名な処方でたくさんの製品が販売されてますが、
やっぱり大手さんはやられてないんじゃないでしょうか。
アクリルポリマーのジェルで肌にぬってこすり続けるとボロボロとカスがたくさん出てきますね。
あのカスが古い角質なんです。。。っていう方もおられるようです。
アナライズとしては、過量のアクリルポリマーがよれて固まった物だと考えます。
実はこの処方は私も組んだことがあります。
アクリルポリマーってのはゲル化剤として優秀な原料でして、
少ない配合量でジェルとして十分な固さ(粘度)が得られるのです。
大体0.3%程度を水に膨潤させれば、傾けても流れないぐらいのものができます。
しかし、この角質ジェルの処方は1.2%近く配合するんですね。
4倍っすよ。
ポリマーってのは水を固めますが、水が飛ぶと固まって皮膜になるのです。
普通のジェルクリームの4倍の皮膜剤が入っている・・・・・
ボロボロとカスが生じるのも納得いただけるかと思います。
また、この処方にはカチオン活性剤(陽イオン)も必要になります。
「・・・・・クロリド」 とか 「・・・・ブロミド」 って成分です。
トリックに寄与している成分だと思いますが、通常トリートメントとかに使用する成分で
スキンケアにはほぼ使うことが無い。
髪には使えても肌にはあまり良くない成分だと思います。
塗ると水が出てくる! ウォーターブレイクタイプのクリーム
クリームなんだけど肌に塗り広げると水滴がどぴゅっと出て来る製品があります。
「ウォータークリーム」なんて呼ばれるようですね。
シリコン系のクリームでWOの系が塗布時に壊れて離水するというものです。
この処方は使った時にオモシロイですが、美容に対してどういうメリットがあるのか・・・
良くもなく、悪くも無くと思っております。
シリコンクリームですが水を9割近く配合できるので化粧水みたいですよね。
水系の美容成分をリッチに配合できる処方上のメリットがあります。
化粧水にクリームの質感、しかもシリコーンのベール感を付与できるので
使い方次第では良いものになると思います。
水溶性の消炎剤を配合でき、適度なシリコン皮膜を作るという面で、
私はハンドクリームとしての処方に向いていると考えています。(参考記事)
ぐちゅぐちゅっ、ペッ。。出したらすごい汚れが出てきた。
最後にオモシロ洗口液ですかね。
ネットの自動広告とかで、女性や男性が紙コップをもって、
中身を見ながらすごく嫌そうな顔をした画像のやつ・・見たことないっすか?
うがいをして吐き出した液を見ると黒い汚れがいっぱい出ている・・・・
出てきた黒いものは口の中の汚れなんでしょうか・・・・
アナライズとしては、これも化学反応を利用したトリック商品です。
処方の特徴として、茶カテキンとクエン酸が配合されているかと思います。
お茶のエキスは製剤の時点では溶媒に溶解して分散しているのです。
クエン酸が入るので物性は弱酸性に調整されえているのですが、
口の中に含んでグチュグチュするとどうなるのか・・・
口の中は常に中性のpHを保つように緩衝能があるのです。
弱酸性で安定分散した液剤を口に含むことで物性が変わり、
唾液やらに含まれる様々な成分と反応して
茶渋エキスが凝集して、黒い塊のようになるのではないかと・・
だからこの商品は何度使っても黒いものが出て来るのだと思います。
逆に出てこない状態になったら、口腔内が良くない状態になっているのかもしれないですね。
トリックにはコストがかかります。
これまで紹介したトリック商品。
製品を調べてみると、どれもなかなかの価格ですが・・それもそのはず。
各トリックには処方上のコストが上乗せされます。
泡パックに使う揮発剤は高価な原料です。
製造するにもいろんな注意が必要で、工数が増えます。
カプセル化顔料も通常の顔料より価格ははるかに高いものになります。
バルク製造時や充填の段階でカプセルが崩壊しないように、いろんな工夫がなされ工数が嵩みます。
撥水クリームは水を多く配合できるのでコストは逆にかからないと思います。
しかし、乳化の際に手間がかかるので工数が嵩みます。
マウスウォッシュはやったことないですが、商品価格が割高です。
お茶のエキスは、洗浄剤の本質に対して配合する意味が理解できません。
変わった商品であるからと言って特殊性をネタに原価とは関係なく、
価格を高めに設定しているケースもあるでしょう。
工数というのは製造するときに発生する工程数(手間)のことを言います。
結局は商品としてあなたがどう評価するのか
いろいろと含むような物言いでお話をしましたが、技術者目線で一個人の見解になります。
実利主義の私としてはぶっちゃけオススメしないと言いたいです。
化粧品は美容を追求する商品です。
本質の伴わないトリックは無駄だと思うし、
それに対してコストをかけた商品はいかがなものかと。
オモシロイだけをアピールして適正価格で売られているものならば
好き嫌いで判断すればいい話ですが、
結局はその特殊な性質を何かの効果にこじつけている製品が多いように思います
また、効果をすり替えて誇張するにいたっては論外ですよね。
最終的に良いか悪いかは商品を選ぶあなたがご判断ください。
ただ、トリック商品の購入を検討される際は、是非この記事を参考にしてもらえたらと思います。
有益な情報配信のために応援をよろしくお願いします。
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