●●原液 って商品があります。
皆さんはどういう印象がありますか??
やっぱり「濃い」「成分そのもの」みたいな感じでしょうか。
この「原液」って表現も、厳密に考えると私的には????って思うのですが、
「石油系なんやら」とかといっしょで、国語辞書の意味とは少し本質が違ってきます。
それじゃあいったいどういう意味なの??
「原液:化粧品原料そのもの」と理解してもらえれば分かりやすいと思います。
今回はこの原液コスメについて語ります。
原液コスメとは
「生詰め」の商品には注意
我々処方開発者は、数多くの化粧品用原料を組み合わせて、化粧品(製剤)を組み上げます。
一般的な化粧品と呼ばれる製品は、原料を組み合わせたものになるのですが、
「原液」と呼ばれる製品は、化粧品原料そのものを容器に詰めた商品と言えるものです。
我々はこういう企画を「生詰め」と呼ぶことがあります。
この言葉にも正確な定義はなく、業界用語になるわけですが、
原料をそのまま充填するのと、若干の加工を加えるのとで違いが生じます。
私は個人的に前者のケースを生詰めと呼んでおり、
特に生詰めの製品については消費者さんの使用方法について注意が必要だと考えています。
それではいくつかの原液コスメ製品について具体的に見てみましょう。
原液コスメ商品をみてみよう
マンダリン果皮エキス
以前に当ブログでもご紹介しましたマンダリンの製品について見てみます。(参考記事)
エビスさんが販売される「オラージュマンダリン」
100%原液と称しておりますので中身は原料のみ、つまり生詰めと思われます。
製品の成分は・・・
上記の3成分の役割を考察します。
マンダリン果皮エキスは言うまでもなく主剤になりますね。
BGは抽出溶媒か、原料の防腐剤の役割だと思われます。
このエキスの原料は、BGの配合割合は70%近くも含有しています。
化粧品製剤ではこのような防腐設計はしません。
BGがそんなにも入っていると、他の成分が入らなくなりますよね。
こういうのは原料だからこそできる構成だと言えます。
また、7割もBGが入っていれば防腐としては安心できると思いますが、
二次汚染に対する防腐耐性についてはちょっと分かりません。
利用の際は丁寧に、菌や異物が混入しないように気をつけましょう。
ヒアルロン酸原液
ヒアルロン酸原液ってなんでしょうね。
ヒアルロン酸で最もスタンダードなのがヒアルロン酸Naです。
この成分は原体としては粉末状になりますので、原液という表現は厳密にはおかしいと言えます。
ただ、化粧品業界で使われる原料、「ヒアルロン酸液」として考えるならば、
原末1.0%の水溶液が原料として100%の原液と言えるかと思います。
原液コスメで言われるこの商品は、1.0%ヒアルロン酸液を指すのだと考えられます。
(もしかしたら原末をもっと高濃度、あるいは低濃度で設計し販売しているものがあるかもしれませんが・・・)
ヒアルロン酸の取り扱いは、資生堂(撤退予定)・キューピー・紀文などのメーカーが
国内主流となるかと思います。
原料の構成成分はシンプルに
ここで見ておきたいのは防腐剤です。
この化粧品原料では、パラベンタイプやフェノキシタイプと呼ばれるものがあります。
メチルパラベンを使用している原料であれば組成としては化粧品製剤で採用される配合量と同等の
原料が多いですが、フェノキシエタノールが使われている原料は
化粧品としてはちょっと多いかなと思われる配合量となっているのです。(0.8%の製品が多い)
これを原料として考えれば、防腐剤が多くても化粧品として配合される量が少ないので
最終的な濃度としては問題ありませんが、原液を化粧品として扱う場合は注意する必要があります。
間違っても原液をそのまま肌に使用したりするのは避けましょう。
また、パラベンにしてもフェノキシにしても
化粧品製剤としては防腐の設計として不十分だと私は考えます。
化粧品の防腐を検討する場合、単一の防腐剤で処方を組むことはあまりありません。
未開封の原料としての安定性は問題ないかもしれませんが、
開封後の二次汚染を考えると、防腐性として十分と言えないのではないかと考えています。
ヒアルロン酸の生詰め製品を利用する場合も、取り扱いには注意したいところです。
粉末も販売されてるようですね。本物の原液コスメ!!
99mの水で溶かせば1.0%(w/w)水溶液の出来上がり。
でも腐らないように注意してくださいね。
プラセンタ原液
こちらも皆さんよく知られている成分です。
原料としてはホルスやニチレイなどが販売しておりますが、
海外の物も多く、最近では北海道のプラセンタ。といった地産原料や由来違いなど様々です。
こちらも原液と謳われてはいますが、モノとしては化粧品の原料そのものと考えられると思います。
代表的な大手メーカーの原料を例に挙げると、
原料の成分構成は次の通りです。
ヒアルロン酸の原料と同じで、パラベンタイプやフェノキシタイプがあります。
しかし、プラセンタ原料のフェノキシタイプは配合量が少ない商品が多いようです。
なぜなのか分かりません。
初めから生詰め商品として使いやすいようにメーカーが最低限の設計にしているのかもしれません。
しかし、私は原料としてもこの設定は少なすぎると思っています。
二次汚染があった場合、腐敗する可能性は非常に高いです。
もし化粧品メーカーが単純に原料を生詰めで製品化していたとしたら、
こちらの製品は全成分にプロパンジオールとフェノキシエタノールが入っています。
2種類の成分で防腐の設定をしていると思います。
原液コスメを使用する際の留意点
先の説明から、原液コスメを使用する場合、次の2点にご留意いただきたいと考えます。
①製品の防腐耐性は十分か、あるいは防腐剤がきつくないか
化粧品の防腐設計とは、「使用期限内で製品が菌による汚染を防ぐ」という目的だけではないのです。
それだけでは不十分なのです。
開封後の使用環境を想定し、いわゆる二次汚染に耐えうるかどうか。
これに対しても防腐を設計する必要があるのです。
そのため、化粧品では微生物限度試験というものを実施し、
菌による汚染に対する耐性も確認しているのです。
しかし、原料はそうではありません。
原料メーカーのスタンスとしては、未開封の原料における品質保証のみなのです。
原料ですから開封後の使用環境を個別に想定し対応する必要は無いのです。
当たり前ですよね。あくまで原料なのですから。
使用方法は化粧品を製造する際に開封し、加工するだけなのですから。
二次汚染を考える必要があるのは化粧品であり、原料には要求されないのです。
だから原料の防腐設計は化粧品のそれとはそもそも基準が異なるわけです。
原料によってはヒアルロン酸のように、防腐剤が多く配合されるケースがあります。
化粧品の処方では化粧品基準という決まりの範疇で配合上限がありますが
原料にそんなものはありません。
菌汚染のリスクを減らすため、また防腐剤の種類を多く使用しないために、
フェノキシエタノールのような単一の成分を多めに配合し、製品としているケースが考えられます。
これも別に悪いことではありません。
原料として考えるのであれば全く問題がありません。
ただ、安易にそういった原料を生詰めで化粧品として製品にすると、
防腐剤過多により刺激の懸念が想定されるわけです。
原料を直に使用することは避けるべきです。
化粧水やクリームに数滴混ぜるなどして利用しましょう。
②直塗りせず他の化粧品と合わせて使うのが望ましい
エキスメーカーの話によると、原料の効果は化粧品製剤として評価した場合に効果が見込めることが多いとか。
例えば原料単味で肌に使っても、効果が見込めないという話を聞いたことがあります。
私のブログでは植物エキスの紹介をしておりますが、
有用成分の評価試験としてヒトモニタ試験という話題が上がります。
モニタ試験で試用する際は必ず製剤を使用するとのことです。例えば・・・
「●●エキスのヒトモニタ試験 原料として1.0%配合ローションとの比較」といった具合になります。
化粧品製剤の処方というのは、添加剤の有用成分が効果的に働くような工夫も含まれているという事なんです。
ですから、
原液だから濃いほど効く、
ならば直に塗ったら効果抜群!!
では無いっ!! ということをご留意ください。
安全性の面でも、特にエキス系の原液については正しく利用することが重要です。
それでも原液コスメはオモシロイ
今回は原液コスメについて消極的な話題に触れましたが、
私は原液コスメの可能性を強く感じています。
機能性の原料を使用者が自由に、選択的に利用できるというのは
とても素晴らしい事だと思います。
私たち技術者は、よい製品づくりを目指して処方を設計しますが
商業行為なので、微量配合して謳ってるだけなんて話は多くあるのです。
ユーザーはその真偽を判断することが出来ません。
常日頃、濃度保障をすればまがい物がなくなり良いと考えますが、
世の中ってのはきれいごとだけではうまくいかないってわけなんですね。
そんな中でオススメできるのが原液コスメだと思っています。
商品の品質は様々なので、今回の記事を参考にしてよいものを選んでください。
原料を化粧品メーカーで加工して製品としているものが良いです。
他の付加成分などが追加されている商品はその可能性があります。
適正な使用方法、保管方法でもってうまく付き合っていただければ
幸せな結果が得られるかもしれません。
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